「社員が、仕事で勝手にAIを使っているかもしれない」「何に気をつければいいのか分からない」。そんな不安を持つ経営者の方は多いのではないでしょうか。この記事では、AI活用の社内ルールの作り方を解説します。
この記事の結論
AIの社内ルールは、「入力してはいけない情報」「使ってよいツール」「出てきたものの確認方法」の3つから決めれば十分に始められます。禁止するだけでは、社員が隠れて使うことにもなりかねません。使ってよい範囲をはっきりさせることが、情報漏えいなどのリスクを減らす近道です。
この記事では、ルールに入れるべき項目と、著作権の基本的な考え方を説明し、最後にそのまま使えるひな形を紹介します。
なぜAI活用の社内ルールが必要なのか
生成AIは、無料で、誰でもすぐに使い始められます。便利な反面、会社が把握しないまま、次のようなことが起きる可能性があります。
- お客さまの個人情報や、社外秘の情報をAIに入力してしまう
- AIが出した誤った情報を、確認せずにお客さまに伝えてしまう
- 他人の作品とよく似た文章や画像を、そのまま使ってしまう
総務省と経済産業省がまとめた「AI事業者ガイドライン」では、AIを使う立場を「AI開発者」「AI提供者」「AI利用者」の3つに分けています。「AI利用者」は、事業活動でAIのシステムやサービスを利用する事業者とされています。仕事でAIを使う会社は、ここにあたります。ガイドラインでは、プライバシー保護、セキュリティ確保、教育・リテラシーなど、10の「共通の指針」が示されています。
ルールに入れるべき6つの項目
1. 使ってよいツール
会社として使ってよいツールと、プラン(無料版・有料版・法人向け)を決めます。
ツールやプランによって、入力した内容がAIの学習に使われるかどうかが異なります。学習に使われない設定やプランを選ぶことも検討しましょう。
2. 入力してはいけない情報
最も大切な項目です。具体的に書き出しておきましょう。
- お客さまや取引先の個人情報(名前、連絡先など)
- 社員の個人情報
- 取引先との契約で、秘密にすると決めている情報
- 公開前の商品情報、価格、経営の数字など社外秘の情報
- パスワードやログイン情報
3. 出てきたものの確認方法
AIは、事実と違う内容を出すことがあります。
- 事実、数字、制度、法律に関わる内容は、公式の資料で確認する
- 社外に出す文章は、必ず人が読んでから使う
- 確認した人が、最終的な責任を持つ
4. 著作権・他人の権利への配慮
AIで作った文章や画像が、他人の作品とよく似ていないかに注意します(くわしくは次の章で説明します)。
5. 使ったことを伝えるかどうか
お客さまに出す資料や、公開する記事で、AIを使ったことをどう扱うかを決めておきます。
6. 困ったときの相談先
「この情報は入力してよいか」「この使い方は問題ないか」と迷ったときに、誰に相談するかを決めておきます。
著作権の基本的な考え方
文化庁の資料(「AIと著作権に関する考え方について」の概要)では、AIで作ったものを使う場面について、次のように整理されています。
- AIで作った画像などをSNSで公開したり、販売したりする場合、通常の著作権侵害と同じ基準で判断されます。
- 具体的には、既存の作品と似ていること(類似性)と、既存の作品をもとに作ったこと(依拠性)が認められると、著作権の侵害になり得ます。
- AIで作ること自体に問題がなくても、作ったものを公開・利用することまで、すぐに問題がないとは限らないとされています。
- 人がほとんど指示を出さず、AIが自動で作ったものは、著作物にあたらないと考えられるとしています。
実務では、次のような使い方を避けるルールにしておくと安心です。
- 特定の作家や作品の名前を指示して、似たものを作らせる
- 他人の文章や画像をAIに読み込ませて、ほぼそのままの形で出力させる
個別のケースが著作権の侵害にあたるかどうかの判断は、弁護士などの専門家に確認しましょう。
ルールを作るときのコツ
- 禁止ではなく「使ってよい範囲」を決める:全面禁止にすると、隠れて使う人が出てきます。
- 短く、具体的に:最初はA4用紙1枚程度で十分です。
- 社員に説明する:ルールを配るだけでなく、なぜ必要かを伝えます。
- 定期的に見直す:ツールや公的なガイドラインは更新されます。半年に1回など、見直す時期を決めておきましょう。
そのまま使える社内ルールのひな形
以下は一般的な例です。自社の業務に合わせて書き換えてお使いください。
ひな形:生成AI利用ルール
- 使ってよいツール:会社が指定したツール(〇〇)のみを使う。個人のアカウントで業務に使う場合は、事前に〇〇に相談する。
- 入力してはいけない情報:お客さま・取引先・社員の個人情報、取引先と秘密にすると約束した情報、公開前の社内情報、パスワードやログイン情報は入力しない。
- 出てきたものの確認:事実・数字・制度・法律に関わる内容は、公式の資料で確認してから使う。社外に出す文章は、必ず人が読んでから使う。
- 他人の権利への配慮:特定の作品や作家に似せたものを作らせない。他人の文章や画像を、ほぼそのまま出力させて使わない。
- 最終的な責任:AIで作ったものを使った場合も、内容の責任は使った人と会社が持つ。
- 相談先:判断に迷ったときは、〇〇に相談する。
- 見直し:このルールは、〇か月ごとに見直す。
※このひな形は一般的な例であり、法的な助言ではありません。業種や取り扱う情報によっては、追加のルールが必要な場合があります。
まとめ
- AIの社内ルールは、「入力してはいけない情報」「使ってよいツール」「出てきたものの確認方法」から始めましょう。
- 禁止するのではなく、使ってよい範囲をはっきりさせることが大切です。
- AIで作ったものの公開・利用は、通常の著作権侵害と同じ基準で判断されます。
- ルールは短く具体的にし、定期的に見直しましょう。
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※法律に関する個別の判断は行っていません。必要に応じて、弁護士などの専門家にご確認ください。

石坂Team NEXT|株式会社NEXTGO 代表
専門家がチームで企業に入り、手を動かして伴走する「Team NEXT」を運営しています。IT業界で24年の経験。支援企業20社超、プロジェクト70件超。
参照した資料
- 文化審議会 著作権分科会 法制度小委員会「AI と著作権に関する考え方について」【概要】(「考え方」は令和6年3月15日取りまとめ)
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/pdf/94057901_01.pdf - 文化庁「AIと著作権について」
https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/aiandcopyright.html - 総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」概要(令和8年3月31日)
https://www.soumu.go.jp/main_content/001064299.pdf - 総務省「AI事業者ガイドライン」掲載ページ
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/ai_network/02ryutsu20_04000019.html - 確認日:2026年10月14日
※公的なガイドラインは更新される場合があります。最新の情報は、各公式サイトでご確認ください。


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