デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)を申請しようと思ったとき、まず何から始めればよいのでしょうか。この記事では、補助金の申請前にやっておきたい事業整理を解説します。
この記事の結論
申請の前にやっておきたいのは、事業の整理です。具体的には、「何のために導入するのか(目的)」「どの業務を変えるのか(業務)」「どれくらい良くなるのか(数字)」の3つを、自分の言葉で説明できるようにしておくことです。この3つは、審査で見られる点とも重なります。
この記事では、申請前にやっておきたい準備を、事業の整理と手続きの準備に分けて解説します。
なぜ補助金の申請前に事業整理が大切なのか
審査で見られるのは「課題とツールの合い方」
公募要領には、審査の主な観点として次のような項目が挙げられています。
- 自社の経営課題を理解し、経営改善に向けた具体的な問題意識を持っているか
- 自社の状況や課題、将来の計画に対して、改善すべき業務と、導入するITツールで期待できる効果が合っているか
- 業務の高度化・効率化や、社内でのデータ共有・分析に取り組み、継続的な生産性向上と事業の成長を目指しているか
- セキュリティ対策を進めているか
つまり、「どんなツールを入れるか」より前に、「自社の課題は何か」「なぜこのツールなのか」が問われます。
採択後も、計画どおりに進める必要がある
デジタル化・AI導入補助金では、3年間の事業計画を立て、労働生産性を上げる目標を設定します。申請額によっては、賃上げの目標も必要です。採択されたあとも、毎年の効果報告で、その達成状況を報告します。
目標を達成できないと、補助金の返還を求められる場合もあります。だからこそ、申請の前に、無理のない計画かどうかを考えておく必要があります。
事業整理の3ステップ
ステップ1:目的を言葉にする
まず、ITツールを導入する目的をはっきりさせます。
- 売上を伸ばしたいのか
- 作業時間や残業を減らしたいのか
- ミスや手戻りを減らしたいのか
- 人手が足りない業務を補いたいのか
目的は1つに絞る必要はありませんが、「いちばん解決したいこと」を決めておくと、ツール選びや計画づくりがぶれにくくなります。
ステップ2:変えたい業務を書き出す
次に、目的に関わる業務を具体的に書き出します。
- その業務は、誰が、どれくらいの時間をかけて行っているか
- どこで時間がかかっているか、どこでミスが起きやすいか
- その業務がどうなれば理想か
業務を書き出したら、補助金の「プロセス」(顧客対応・販売支援、会計・財務・経営、総務・人事・給与・労務など)のどれに当たるかも確認しておきましょう。
ステップ3:数字の見通しを立てる
最後に、導入によってどれくらい良くなるかを、数字で考えます。補助金で使う「労働生産性」は、次の式で計算します。
労働生産性 =(営業利益+人件費+減価償却費)÷ 年間の総労働時間
たとえば、ツールで作業時間が減れば、総労働時間が減り、労働生産性は上がります。売上や利益が伸びれば、分子が大きくなり、労働生産性は上がります。
- 1年後に3%以上、計画期間の年平均でも3%以上向上させる目標が必要です(過去にIT導入補助金を使った事業者は4%以上)。
- 賃上げの目標が必要な場合は、給与を増やしても事業が回るかも考えておきます。
数字は、IT導入支援事業者と確認したうえで事務局に報告します。
手続きの準備
事業の整理と並行して、次の準備も進めておきましょう。
アカウントと宣言
- GビズIDプライム:国の行政手続きで使う共通のアカウントです。申請に必要です。
- SECURITY ACTION:IPA(情報処理推進機構)の制度で、情報セキュリティ対策に取り組むことを自己宣言するものです。「一つ星」か「二つ星」の宣言が必要です。
提出書類
申請には、次の書類が必要です。代わりの書類は認められていません。
| 法人 | 個人事業主 |
|---|---|
| 履歴事項全部証明書(発行から3か月以内) | 運転免許証、運転経歴証明書、住民票(発行から3か月以内)のいずれか |
| 法人税の納税証明書(その1またはその2) | 所得税の納税証明書(その1またはその2) |
| 直近の貸借対照表と損益計算書 | 税務署が受け取った直近の確定申告書の控え |
| ― | 青色申告決算書または収支内訳書 |
審査の加点につながる取り組み
公募要領では、次のような取り組みが審査の加点の対象になっています。どれも、条件を満たして利用・実施することが必要です。
- IT戦略ナビwith(中小企業基盤整備機構):自社のIT活用の方向性を「IT戦略マップ」として整理できるウェブサービス
- IT経営サポートセンター(中小企業基盤整備機構):1回60分の無料オンライン相談
- 省力化ナビ(中小企業基盤整備機構):業種別に、業務の悩みの解決策を確認できるサイト
- デジタル化セカンドオピニオン:交付申請までに、確認者との面談を済ませる取り組み
事業整理の手助けにもなるので、あわせて活用を検討しましょう。
申請内容は、事業者本人が判断する
申請書の作成は、IT導入支援事業者と一緒に進めます。ただし、申請内容の最終的な判断と、申請の提出は、事業者本人が行います。公募要領では、申請マイページのログイン情報を第三者に渡してはいけないとされています。
だからこそ、「なぜこのツールを入れるのか」「どんな成果を目指すのか」を、事業者自身が説明できる状態にしておくことが大切です。
まとめ
- 申請前にやっておきたいのは、目的・業務・数字の3つの整理です。
- 審査では、自社の課題と、ツールで期待できる効果が合っているかが見られます。
- 労働生産性や賃上げの目標は、無理なく達成できるかを考えて立てましょう。
- GビズIDプライムの取得、SECURITY ACTIONの宣言、提出書類の準備も進めておきます。
- 申請内容は、事業者本人が判断し、説明できる状態にしておきましょう。
最新の公募スケジュール・詳細はこちら(デジタル化・AI導入補助金 事務局ポータルサイト)

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補助金の活用を考えている方へ
立ち上げたい事業や進めたい企画があれば、補助金を活用して効率よく展開できる場合があります。
ただ、目的・業務・数字の整理を一人で進めるのは、なかなか大変です。経営者の頭の中にある考えを、言葉と数字にするには、話しながら整理するのが近道です。
経営×AIラボ(Team NEXT)では、補助金を使って取り組みたい事業の整理や壁打ちをお手伝いしています。導入前の段階から、一緒に整理しませんか。
※当社はIT導入支援事業者ではありません。ITツールの販売や、特定のツールのおすすめは行っていません。申請書類の作成・代理申請は行わず、申請内容の最終的な判断と記載は事業者さまご自身に行っていただきます。

石坂Team NEXT|株式会社NEXTGO 代表
専門家がチームで企業に入り、手を動かして伴走する「Team NEXT」を運営しています。IT業界で24年の経験。支援企業20社超、プロジェクト70件超。
参照した資料
- 中小企業デジタル化・AI導入支援事業事務局「デジタル化・AI導入補助金2026 公募要領(通常枠)」第7回公募〜(2026年10月9日更新)
https://it-shien.smrj.go.jp/pdf/it2026_kaitei_koubo_tsujyo.pdf - 確認日:2026年10月13日(公募要領PDFの内容を確認した日)
※本記事は、上記の公募要領の内容をもとに作成しています。制度の内容は変更される場合があります。最新の情報は、必ず公式サイトでご確認ください。


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