「AI導入補助金」と呼ばれることの多いこの制度の正式名称は、「デジタル化・AI導入補助金」(旧IT導入補助金)です。中小企業が、業務の効率化に役立つITツールやAIを導入するときに、その費用の一部を国が補助します。ただし、どんなAIにも使えるわけではなく、事務局に登録されたITツールが対象です。
この記事の結論
この補助金は、事務局に登録されたITツールを、登録された支援事業者と一緒に申請する仕組みです。どんなツールにも使える補助金ではありません。だからこそ、ツールを選ぶ前に「自社のどの業務を、どう変えたいか」を整理しておくことが、うまく活用するための近道です。
この記事では、制度の全体像と申請の流れを、はじめての方にもわかるように解説します。
AI導入補助金(デジタル化・AI導入補助金)とは?
旧IT導入補助金から名前が変わった制度
デジタル化・AI導入補助金は、令和7年度補正予算の事業から、「IT導入補助金」の名称を変えた制度です。中小企業庁の資料でも「デジタル化・AI導入補助金(旧:IT導入補助金)」と書かれています。
目的は、中小企業・小規模事業者の生産性を上げることです。働き方改革や賃上げ、インボイス制度などへの対応に役立つITツールの導入費用を、一部補助します。
「AI」も対象のソフトウェアに含まれる
名前に「AI」が入ったとおり、公募要領では、補助の対象となるソフトウェアにAIを含むと明記されています。たとえば、チャットボットや、AIで顧客を分析する機能などが例として挙げられています。
ただし、対象になるのは事務局に登録されたITツールだけです。使いたいAIツールが対象かどうかは、公式サイトの「ITツール検索」や事務局で確認する必要があります。
目的に応じて5つの枠がある
この補助金には、目的別に5つの枠があります。
- 通常枠
- インボイス枠(インボイス対応類型)
- インボイス枠(電子取引類型)
- セキュリティ対策推進枠
- 複数者連携デジタル化・AI導入枠
この記事では、通常枠を中心に説明します。
AI導入補助金は、従業員50人以下の会社でも使える?
対象は、中小企業・小規模事業者等です。業種ごとに、資本金か従業員数のどちらかが基準以下であれば対象になります。
従業員数の基準は、業種によって50人以下から300人以下までと幅があります。そのため、従業員50人以下の会社であれば、業種を問わず従業員数の基準は満たします。
一方で、大企業が株式の多くを持っている会社などは対象外です。そのほか、申請には次のような準備も必要です。
- 「GビズIDプライム」(国の行政手続きで使う共通のアカウント)を取得していること
- IPA(情報処理推進機構)の「SECURITY ACTION」で、情報セキュリティ対策に取り組むことを自己宣言していること
- 3年間の事業計画を立て、労働生産性を上げる目標を設定すること
対象者の条件は、別の記事でくわしく解説しています。
何に使えるのか
補助の対象は、IT導入支援事業者が提供し、事務局に登録されたITツールの導入費用です。IT導入支援事業者とは、ITツールを提供するベンダーなどで、事務局の審査を受けて登録された事業者のことです。
対象となる費用は、大きく3つに分かれます。
| 区分 | 主な中身 |
|---|---|
| ソフトウェア | 業務用のソフトウェア。買い切り型のほか、月額・年額で支払うクラウドサービスも対象(利用料は最大2年分) |
| オプション | 機能拡張、データ連携ツール、セキュリティ対策 |
| 役務(サービス) | 導入時の設定・マニュアル作成・研修、導入後の活用支援、保守サポート |
ソフトウェアは、会計、受発注、顧客管理、勤怠・給与など、特定の業務を効率化するものである必要があります。ワープロや表計算のような汎用ツールだけでは申請できません。
また、補助金の申請を代行してもらう費用や、交付決定の前に購入したツールは対象外です。
対象経費は、別の記事でくわしく解説しています。
補助額と補助率
通常枠の補助額と補助率は、次のとおりです(第7回公募以降の公募要領より)。
| 補助金の申請額 | 補助率 | 必要な条件 |
|---|---|---|
| 5万円〜150万円未満 | 1/2以内 | 業務プロセスを1つ以上含むソフトウェア |
| 150万円〜450万円以下 | 1/2以内 | 業務プロセスを4つ以上含むソフトウェア |
地域別最低賃金に近い賃金で雇っている従業員が一定以上いる場合は、補助率が2/3以内になります。
注意したいのは、賃上げの目標です。申請額が150万円以上の場合などは、従業員1人当たりの給与を一定以上増やす計画を立て、従業員に表明する必要があります。この目標を達成できないと、補助金の返還を求められる場合があります。
補助額・補助率と賃上げの条件は、別の記事でくわしく解説しています。最新の金額は、必ず公式サイトで確認してください。
申請から補助金を受け取るまでの流れ
申請は、事業者とIT導入支援事業者が「共同事業体」として行います。大まかな流れは次のとおりです。
- 事前準備:GビズIDプライムを取得し、IT導入支援事業者に相談する
- ツールの選定:IT導入支援事業者と、導入するITツールを選ぶ(この時点では契約しない)
- 申請の準備:IT導入支援事業者から招待を受け、「申請マイページ」を開設する
- 交付申請:事業計画とツールの情報を確認し、事業者本人が事務局へ提出する
- 交付決定:審査を経て、事務局から交付決定の通知が届く
- 事業の実施:ITツールを契約・導入し、代金を支払う
- 実績報告:導入と支払いが終わったことを報告する
- 補助金の交付:補助金の額が確定し、事務局から補助金が支払われる
- 効果報告:導入後、生産性や賃上げの状況を報告する(3年間)
申請は事業者本人が行う
申請書の作成はIT導入支援事業者と一緒に進めますが、申請の提出は事業者本人が行います。公募要領では、申請マイページのログイン情報を、IT導入支援事業者を含む第三者に渡してはいけないとされています。本人が行うべき手続きを他人が行うと「なりすまし」とみなされ、交付が取り消されることもあります。
交付決定の前に契約しない
特に注意したいのが、交付決定の前にツールを契約・購入してしまうことです。交付決定より前に契約・発注・支払いをした費用は、補助の対象になりません。
また、補助金は、ツールの代金を支払って実績報告をしたあとに交付されます。先に代金を支払う必要があるため、資金の準備もしておきましょう。
申請前に知っておきたい3つの注意点
1. どんなツールにも使える補助金ではない
対象は、事務局に登録されたITツールだけです。「使いたいツールが決まっているから補助金を使おう」と考えても、そのツールが登録されていなければ対象になりません。
2. 導入して終わりではない
採択後も、実績報告と3年間の効果報告があります。導入したツールを途中で解約すると、補助金の返還が必要になる場合もあります。社内で使い続けられるかどうかを、導入前に考えておくことが大切です。
3. 審査があり、採択されない場合もある
申請内容は審査され、採択されない場合もあります。審査では、自社の経営課題を理解しているか、改善したい業務と導入するツールの効果が合っているか、などが見られます。
申請前にやっておきたいこと
この補助金を活用するうえで最も大切なのは、ツール選びの前の準備です。
- 目的を決める:何のために導入するのか(売上を伸ばしたい、残業を減らしたい、など)
- 業務を棚卸しする:どの業務に時間がかかっているか、どこを効率化したいか
- 数字の見通しを立てる:労働生産性や賃上げの目標を、無理なく達成できるか
どのAIをどの業務に使うか迷う場合は、業務から選ぶAI活用50選(無料PDF)も参考にしてください。
ITの導入について公的に相談したい場合は、中小企業基盤整備機構(中小機構)の「IT経営サポートセンター」も利用できます。1回60分の無料オンライン相談で、条件を満たして利用すると補助金の審査で加点の対象にもなります。
まとめ
- デジタル化・AI導入補助金は、旧IT導入補助金の名称を変えた制度です。
- 対象は、事務局に登録されたITツールで、IT導入支援事業者と共同で申請します。
- 従業員50人以下の会社は、業種を問わず従業員数の基準を満たします。
- 申請の提出は事業者本人が行い、交付決定の前に契約してはいけません。
- 賃上げ目標や効果報告など、採択後の義務も事前に確認しておきましょう。
制度の締切や最新のスケジュールは、時期によって変わります。最新情報は公式サイトで確認してください。
最新の公募スケジュール・詳細はこちら(デジタル化・AI導入補助金 事務局ポータルサイト)

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補助金の活用を考えている方へ
立ち上げたい事業や進めたい企画があれば、補助金を活用して効率よく展開できる場合があります。
ただ、ツールを選ぶ前に「自社のどの業務を、どう変えたいか」が決まっていないと、補助金を使っても成果につながりにくくなります。
経営×AIラボ(Team NEXT)では、導入前の事業整理や壁打ちをお手伝いしています。どの業務を効率化すべきか、何に投資するかを一緒に整理しませんか。
※当社はIT導入支援事業者ではありません。ITツールの販売や、特定のツールのおすすめは行っていません。申請書類の作成・代理申請は行わず、申請内容の最終的な判断と記載は事業者さまご自身に行っていただきます。

石坂Team NEXT|株式会社NEXTGO 代表
専門家がチームで企業に入り、手を動かして伴走する「Team NEXT」を運営しています。IT業界で24年の経験。支援企業20社超、プロジェクト70件超。
参照した資料
- 中小企業デジタル化・AI導入支援事業事務局「デジタル化・AI導入補助金2026 公募要領(通常枠)」第7回公募〜(2026年10月9日更新)
https://it-shien.smrj.go.jp/pdf/it2026_kaitei_koubo_tsujyo.pdf - 中小企業庁「『デジタル化・AI導入補助金2026』の概要」令和8年4月
https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/yosan/r8/digital_ai_summary.pdf - 確認日:2026年10月13日(公募要領PDFの内容を確認した日)
※本記事は、上記の公募要領の内容をもとに作成しています。制度の内容は変更される場合があります。最新の情報は、必ず公式サイトでご確認ください。


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